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熱血パーサー乗務録 連載終了

VOL 7.チンピラやくざとのトラブル(おわり)

その後、私は前方客室のスーパーシート(現行Jクラス)のお客様に搭乗御礼の挨拶を済ませて、彼等5人を空港警察官と所轄の通称「丸暴」と呼ばれる暴力団対策専門の刑事に引き渡したのです。

彼等は当初「何なんだよ!」と気勢をあげて警察官に突っかかっていたが、「話を聞かせてもらう!」という丸暴さんの凄みのある言葉に、意外にすんなりと5名全員が身柄を拘束(?)されたのでした。

私は機長と地上の責任者に詳細を口頭で説明し、被害者のB子と証人のA子を伴い、空港内にある警察事務所に赴くことになった。
 
当日の我々の乗務パターンは羽田→札幌→羽田→伊丹で終了し、今夜は大阪に一泊することになっていたので、今回のケースに直接かかわった我々3人以外のスチュワーデス達には、機長達と一緒に先にホテルに行ってもらうことにした。

空港警察の事務所で約30分ほど、私と目撃者のB子に対して、警察担当者から機内での状況について、詳細な調書作成のための聞き取りが行われた。
最後に、調書の確認があり、私とB子がその書類に署名した。

その後、機内で私が対応したチンピラ2人と私が同室で、他の3人のチンピラは別室に、A子とB子は会社の総務課長と別室で待機することになった。

私とチンピラ2人に警察官2人、それに丸暴担当が2人で、4畳半ほどの狭い部屋は満員状態だった。

私は丸暴さんからパイプ椅子を勧められて座った。

2人のうちの兄貴分が同じように椅子に座ろうとした直後、丸暴の1人が突然、大声で彼に向かって

「テメー、勝手にすわんじゃねー!」

と椅子を蹴飛ばしたのだ!

可哀想に、その兄貴分は後ろ向きにひっくり返り、壁に頭をぶつけたのである「ゴン・・」と鈍い音がした。

それからの丸暴と彼ら2人のやりとりは約1時間ほど続いたのですが、どっちがヤクザかわからない内容であった・・・とだけ言っておきます。

彼等のやりとりを聞いていた私は、丸暴担当の警察官2人がちゃんと強面で脅す役と、「まーまー・・・」と
やさしげに対応する役にシッカリと役割を分担しているのを学んだのでした。

なにやら関西漫才のボケと突っ込みのコンビみたいなものだな・・・と勝手に分析していたのです(笑)

部屋の片隅で壁に向かって、ひたすら書類を作成している警察官は終始無表情でした。

結果的には、若いチンピラから私に盗まれた5千円とB子の住所と電話番号を書いたメモが返却され、兄貴分と若い2人は連名で私宛の謝罪文まで書かされたのです。

「このたびは、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」と謝罪の言葉を告げられたので、私も「若菜に塩」状態の2人を見て、「はい、わかりました」とだけ答えたのでした。

その後いったん部屋を出て、丸暴担当の警察官は私とA子とB子と一緒に待っていた会社の総務課長を交えて彼等5人の処遇をどうするかということになったのです。

正式な被害届けを出せば、しばらく2人はぶち込める(拘留)とのことでした。

結果的には、丸暴さんの「彼等の住所はわかってるし、チンピラだし、さんざん脅しつけておいたので、今後皆さんに迷惑をかけるようなことはないです」の言葉もあって、今回はこれで許してあげることにしたのです。

再び、私は彼等2人のいる部屋に戻り、相互に調書の確認をして、ケース・クローズとなったのでした。

丸暴の最後のせりふは「お前ら、こちらのチーフパーサーやスチュワーデスの方に何かあったら、分かってるだろうなー!えー!」だったのです。

チーフ・パーサーの仕事は、お客様の安全を確保し、快適な飛行機旅行を演出するだけではなく、その便に同乗しているスチュワーデス達の上司として、時には身体を張って、彼女達の安全を守る役割も果たさなければならないのです。

最近は男性チーフが少なくなり、ほとんどが女性チーフになっているので、彼女達の精神的なプレッシャーは大変だろうなー・・・と思います。

操縦室には男性パイロットがいますが、今回のようなケースでも、例えハイジャックでスチュワーデスに危害が加えられても、彼等が操縦室から客室に出ることはないのです。

彼等は飛行機の運航に専念するのが仕事ですから、出たくても出られないのです。

定宿のホテルに着くと、私には例によって、今回のトラブルの顛末を詳細に報告書にまとめる仕事が残っていた。

スチュワーデス達はパイロット達と居酒屋に行った。
私は、近くのコンビニで買ったビールとおにぎりを食べながら、わびしく報告書を3時間かかって書き上げた。

今回はややこしいことにならなくてヨカッタ・・・と思いながら。

                                (完)

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