バンキョーハートフル通信2010/2 映画 「100万円と苦虫女」について 松浦 信男 私は、今回、2009年度 第4回目の読書感想文の課題として、この映画の感想文を社員の皆さんに書いてもらいました。そして、今、先ほど皆さんの書かれた感想文をひととおり、全部読み終わりました。 皆さんの読書感想文を読んでいて、毎回思うことですが、私は、ひとそれぞれ、さまざまな感想を持つことに、とても嬉しく楽しく思っています。「一つの答えじゃない文章」は、読んでいてとても、興味深いものです。 実は、この映画自体は私自身が、見つけたものではありません。もともと、弊社の社労士の出口さんが、「とてもいい映画です。」とすすめていたので、私自身も観てみたというのが、きっかけです。しかしながら、すこし不思議な内容の映画なので、皆さんがどういう感想を持つかが、知りたくなりました。私が、好きな映画というのは、昔から、たいてい、こういう映画です。書いてみます。 主人公は、さまざまな苦難にあい、その結果として何も得られず、むしろ「多くを」失います。しかし、ただひとつ、オープニングとラストで主人公が、変わる部分があります。それは、「主人公の心が、(オープニングよりラストのほうが)自由になっている。」という映画なんです。そしてそれを一番知っているのは映画を観ている私達なのです。このたとえが、最もよくわかる映画は、「風と共に去りぬ」です。 この映画の主人公の鈴子は、「世の中と、積極的にかかわらないこと」という生き方をしたために、「前科」をもってしまいます。このくだりも、うまくやれば、きっと切り抜けられたのですが、鈴子なりの「うまくない」生き方のために、拘置所に入れられてしまいます。やがて、家族の事件に対する不理解もあって彼女が、家出を決意するところから、物語は、動き出します。つまり、「ほんの少しの思いやりを出すことが出来ない人間関係」が鈴子を旅に誘うことになるのです。 ここからが、物語のキモなのですが、旅先で、「異常なほど」鈴子は、才能を発揮します。まるで、コメディというか、おとぎ話の世界です。旅に出たとたん「なにをやらしても天才な娘」に変身するわけです。ですから、彼女はどこへ行っても愛され続けます。本人の性格のせいで、そうなるほど、居づらくなるのですが、「100万円貯めたら別の土地に行くこと」という魔法が懸かっているため、旅は続くことになります。物語の終盤になって、本当に好きになれる相手にめぐりあった時、鈴子の魔法は解けてしまいます。「いつまでも、愛するひとのそばにいたい」という普遍的な感情のために、鈴子は苦しみます。なぜなら、物語の仕掛けが全部、これまでと逆に回り出すからです。 ラストシーンがハッピーエンドでないように見えることに不満を持った人も多かったようですが、私は、とても気にいっています。「まっ、いいか。」という鈴子の言葉には、「心の自由」が感じられるからです。その実、彼女の魔法を解いたのは、鈴子自身なのですが、弟とのエピソードのせいで、ここのところは、うまく隠されています。 映画前半の夕方、姉弟ふたりが団地のそばで手をつないで歩くシーンは、すごく美しいですね。この場面をもし、いまでも皆さんが思い出せるとしたら、私の今回の試みは、成功したことになります。なぜなら、「私達の美しい毎日」は、いつでも後になって、意外なところに存在していることが、多いからです。
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